ストリートスマート

英語では「ブックスマート」や「ストリートスマート」という言葉があります。

前者は、学業が優秀で偏差値が高い人。後者は、自分が体験したことを糧にした現場対応力の優れた人を指します。日本社会は、高度成長期より周囲と足並みをそろえ協調できる人、決められたことを指示通りに効率かつ正確に処理できる人が長く現代に渡り求められてきました。個人の意見や発想が重視されることは特殊な場合に限られ、業務によっては、むしろマイナスに働くとさえ考えられる始末です。ゆえに今までのビジネス界の主役は、既存のシステムに最適化した「ブックスマート」でした。彼らは、既存の成功事例などから論理的に思考展開し、現状からの〝改変〟をゴールとして掲げ、モノゴトを進化させてきました。『既存の市場ニーズに新しさを付加するのだからもっと売れる』と。機能は複雑・多機能化し、オーバースペックな製品群が言葉もなく在庫となりました。

多くがすでに気付いている、もう時代は変わりはじめていると。

既存のロジックでは解決できない事案が加速する昨今。様々なスタートアップを勢いのある「ストリートスマート」たちが〝革新〟をゴールとして掲げ、モノゴトを誕生させています。既存の市場ニーズに新しさを付加する〝改変〟ではなく、今までなかったモノゴトを市場価値として創出する〝革新〟を提供してくれるのです。

「ブックスマート」の多くは、知的レベルは優れてる反面応用が利かず、急変化する現代の荒波にパドリングすらできていないように見えます。現在、明らかに世界を変えているのは、失敗することをむしろ楽しみながら次の一歩を踏み出せる「ストリートスマート」たちといっても過言ではありません。

スティーブ・ジョブスやマーク・ザッカーバーグをはじめとする、今までは「厄介者」とされてきた人たちが、常に社会に対して「Why?」と問い続け、世界を一変させました。そこには、自分が信じる世の中へと変貌させようとする強烈なまでの信念と野心が宿っています。

スティーブ・ジョブズがAppleに再来した1997年の「Think Different.」キャンペーンCM。それなりにMacマスターになっていた私の心に、強烈なインパクトと共感を提供してくれました。


クレージーな人たちがいる
反逆者、厄介者と呼ばれる人たち
四角い穴に 丸い杭を打ちこむように

物事をまるで違う目で見る人たち

彼らは規則を嫌う 彼らは現状を肯定しない

彼らの言葉に心をうたれる人がいる

反対する人も 賞賛する人も けなす人もいる

しかし 彼らを無視することは誰もできない

なぜなら、彼らは物事を変えたからだ

彼らは人間を前進させた

彼らはクレージーと言われるが 私たちは天才だと思う

自分が世界を変えられると本気で信じる人たちこそが

本当に世界を変えているのだから


Think Different.


このメッセージを20年前に提唱し、現在の世界価値を創ったスティーブ・ジョブズは、厄介者と自分等をつまはじきにする優等生たちが、実は将来的に自身がつまはじきにされないために現在までの社会構造を形成したのだと感じとっていたのかもしれません。そんな窮屈な世の中だからこそ自ら警鐘を鳴らし、様々なイノベーションを起こし世の中を変えたのだとしたならば、世界はもっと面白くなるはず…。

ゆとり教育を失敗したという人がいます。その教育が目指した「生きる力」は、大きい括りで考えれば「ストリートスマート」を義務教育から実践しようとした試みでは?芽が出るのはこれからかもしれないのに、それらを頭ごなしにバカにする脳が退化したことすら気付かない老害たちが牛耳る社会。それらを打ち崩し、すべての人たちが気兼ねせずに「Why?」と発し、世の中を自らの意思で変えていく、そんな社会はもうすぐ近くまで来ています。

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